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H 2. 9.19 東京地裁 昭和61(行ウ)151 法人税更正処分等取消請求事件 主文:原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

H 2. 9.19 東京地裁 昭和61(行ウ)151 法人税更正処分等取消請求事件

H 2. 9.19 東京地裁 昭和61(行ウ)151 法人税更正処分等取消請求事件

 主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 原告の昭和五四年四月一日から昭和五五年三月末日までの事業年度分の法人税につき、被告が昭和五八年六月二三日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を二四億六〇九三万九三五七円として計算した額を超える部分を取り消す。
2 原告の昭和五五年四月一日から昭和五六年三月末日までの事業年度分の還付金につき、被告が昭和五八年六月二九日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、欠損金の額を五億九九一九万四一七三円として計算した額に満たない部分を取り消す。
3 原告の昭和五六年四月一日から昭和五七年三月末日までの事業年度分の法人税につき、被告が昭和五八年六月二九日付けでした更正(昭和五八年九月末日付けでした減額更正後のもの)及び過少申告加算税賦課決定(昭和五八年九月末日付けでした減額変更決定後のもの)のうち、所得金額を四億九八〇〇万八八五八円として計算した額を超える部分を取り消す。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告の昭和五四年四月一日から昭和五五年三月末日までの事業年度(以下「昭和五五年三月期」という。)、昭和五五年四月一日から昭和五六年三月末日までの事業年度(以下「昭和五六年三月期」という。)及び昭和五六年四月一日から昭和五七年三月末日までの事業年度(以下「昭和五七年三月期」という。)(以下、右の各事業年度を「本件各事業年度」という。)の法人税について、原告のした確定申告、これらに対する被告の各更正及び各過少申告加算税の賦課決定並びに国税不服審判所長がした審査裁決の経緯は、別表一ないし三に記載のとおりである。
2 しかし、請求の趣旨記載の各更正(以下「本件各更正」という。)には、原告の所得金額を過大に認定した違法があり、本件各更正を前提としてされた請求の趣旨記載の各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各決定」という。)も違法である。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2は争う。
三 被告の主張
1 原告の本件各事業年度の所得及びその内訳
原告の本件各更正に係る各事業年度の所得金額(欠損金額)及びその内訳は、次のとおりである(ただし、△はマイナスを表す。)。
(一) 昭和五五年三月期
(1) 申告所得金額                            二四億四七一七万三七四五円
(2) 福利厚生費中損金不算入額                           一五万七二九六円
(3) 減価償却超過額                                五〇万九二五九円
(4) 期末為替換算差損中損金不算入額                        三〇万三〇五〇円
(5) 売上計上漏れ                                 七五万六六七八円
(6) 仕入過大計上額                              一三二八万一四一五円
(7) 受取配当益金不算入過大額                          二九一万二八九八円
(8) 特定外国子会社等に係る課税対象留保金額の益金算入額            二七二八万六四八六円
(9) 加算額合計(右の(2)ないし(8))                   四五二〇万七〇八二円
(10) 貸倒引当金繰入超過額認容                           一万一九九六円
(11) 価格変動準備金積立超過額認容                       三七二万一六六七円
(12) 前受金認容                                 一八万六六〇一円
(13) 事業税認定額                                二三万四七二〇円
(14) 減算額合計(右の(10)ないし(13))                 四一五万四九八四円
(15) 所得金額(右の(1)+(9)-(14))             二四億八八二二万五八四三円
(二) 昭和五六年三月期
(1) 申告所得金額                            △六億〇二一九万八四三六円
(2) 受取配当益金不算入過大額                          三三〇万三一八三円
(3) 特定外国子会社等に係る課税対象留保金額の益金算入額          一億六六五八万八三九八円
(4) 加算額合計(右の(2)及び(3))                 
 一億六九八九万一五八一円
(5) 事業税認定損(一)                              二九万八九二〇円
(6) 事業税認定損(二)                             三二七万四三二〇円
(7) 減算額合計(右の(5)及び(6))                     三五七万三二四〇円
(8) 所得金額(右の(1)+(4)-(7))               △四億三五八八万〇〇九五円
(三) 昭和五七年三月期
(1) 申告所得金額                             四億八二二六万〇〇四二円
(2) 特定外国子会社等に係る課税対象留保金額の益金算入額          一億〇九一四万四九七九円
(3) 雑収入計上漏れ                              一四七三万六〇二七円
(4) 交際費等の損金不算入額                           一〇三万四五〇一円
(5) 加算額合計(右の(2)ないし(4))                 一億二四九一万五五〇七円
(6) 減算額(交際費等の損金不算入額認容)                      二万一七一二円
(7) 所得金額(右の(1)+(5)-(6))                六億〇七一五万三八三七円
2 タックスヘイブン課税とその適用除外要件
(一) 租税特別措置法(昭和六〇年法律第七号による改正前のもの。以下「措置法」という。)六六条の六第一項は、内国法人等が租税の軽課税国(タックスヘイブン)に子会社等を設立して租負担を不当に回避することを防止するため、タックスヘイブンに本店等を有する特定外国子会社等の発行済株式等を一定割合以上保有している内国法人等について、特定外国子会社等の各事業年度に係る未処分所得の金額から留保したものとして政令(同法施行令三九条の一五第一項)で定める金額(以下「適用対象留保金額」という。)のうち、右内国法人の有する当該特定外国子会社等の保有株式等に対応するものとして政令(同条二項)で定めるところより計算した金額(以下「課税対象留保金額」という。
)を右各事業年度終了の日以後二月を経過した日を含む右内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する旨規定している(以下、この規定による課税を「タックスヘイブン課税」という。)。
(二) ところで、同条三項は、特定外国子会社等が、次に掲げる要件(以下「適用除外要件」という。)のすべてを充足している場合には、右のタックスヘイブン課税に関する規定を適用しないものとしている。
(1) その事業が株式(出資を含も。)若しくは債権の保有、工業所有権等若しくは著作権等の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たるものとしていないこと(以下、これを「非持株会社等基準」という。)
(2) その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下「本店所在地国」という。)において、その主たる事業を行うのに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること(以下、これを「実体基準」という。)
(3) 本店所在地国において、その事業の管理、支配及び運営を行っていること(以下、これを「管理支配基準」という。)
(4) その主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業及び航空運送業である場合には、その事業を主として同法四〇条の四第一項各号、同法六六条の六第一項各号及び同法施行令三九条の一六第三項各号の定める関連者以外の者との間で行っている場合として政令(同法施行令三九条の一六第四項)で定める場合に該当すること(以下、これを「非関連者基準」という。)
(5) その主たる事業が右(4)以外の事業である場合には、その事業を主として本店所在地国において行っていること(以下、これを「所在地国基準」という。)
(6) 他の特定外国子会社等から受ける利益の配当又は剰余金の分配の額(ただし、同法六六条の六第一項の規定の適用による事業年度の未処分所得金額から充てられたものに限る。)が、各事業年度の総収入金額の五パーセントを超えていないこと(以下、これを「配当基準」という。)
3 原告の本件各事業年度における特定外国子会社等に係る課税対象留保金額の益金算入
(一) 大蔵大臣から軽課税国として指定されている香港に本店を有するATAKA LUMBER HONGKONG LIMITED(安宅木材有限公司。以下「ALH社」という。)は、その発行済株式のすべてを内国法人である原告に保有されていたから、措置法六六条の六第一項に規定する原告に係る特定外国子会社等に該当する。
(二) ALH社は、木材の卸売業を営んでいたが、以下に述べるとおり、前記のタックスヘイブン課税の規定の適用除外要件の内の管理支配基準を充足していなかった。
すなわち、措置法六六条の六第三項の管理支配基準の充足の有無の判定に当たっては、その特定子会社等の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務の執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判断されるべきところ、本件では、次のような事実があったから、ALH社がその本店所在地国である香港においてその事業の管理支配及び運営を自ら行っているとはいえないものであった。
ア ALH社の業務執行に関する重要な意思決定機関である取締役会及び株主総会は、すべて原告の本店所在地において開催されていた。
イ ALH社の取締役四名は、いずれも原告の取締役を兼任しており、また、ALH社に常勤している取締役はA一名だけであった。
ウ ALH社が買い付ける南洋材の売買の取引条件の決定、輸送、クレームの処理などはすべて原告が行い、ALH社は、原告の指示に従い、外形的に契約の当事者となって右南洋材の売買契約を締結し、代金の決済、差金と称する金員の支払及び融資に伴う諸手続を行っていたに過ぎない。
エ 原告は、ALH社の原木の輸出業者(以下「シッパー」という。)に対する前渡金又は貸付金及び船積みごとの取引金額等すべての取引内容をノートに記帳し、各シッパーごとの債権債務を管理していた。
オ ALH社の役員の人事は、すべて原告の取締役会で審議され、決議されており、その取締役会には、ALH社の現地駐在取締役Aは出席していなかった。
カ ALH社の現地駐在取締役Aの給与改訂が原告の社内の稟議で決定されていた。
キ ALH社の事務所の借り換えに係る許諾、新事務所の内装の内容及び予算、新事務所の披露等について、その都度ALH社から原告に対して稟議の申し出があり、原告のもとで決定されていた。
ク 原告は、ALH社が原告以外の者との木材取引によって得た利益から「ノーハウ利用料」の名目で金員を得ていた。
(三) (1)仮に、ALH社が卸売業ではなく原告主張のとおりサービス業を営むものであったとしても、ALH社は、やはり右管理支配基準を充足していなかった。
すなわち、原告の南洋材の取引にALH社を介在させるか否かは南洋材の輸入業務にとって不可欠の条件ではなく、本件で原告がALH社を介在させてシッパーに対するサービスを行わせていたのは、原告がシッパーの要望に応えてALH社をしてそのようなサービスを行わせていたに過ぎないものである。また、ALH社の行うサービス業務の内容は、いずれも原告とシッパーとの間で取り決められる木材輸入契約の内容により自動的に確定し、定型的に処理できるものばかりであった。
したがって、ALH社が原告から独立して行う業務というものは全く存在しなかったというべきであり、ALH社が本店の所在する香港でその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていたものとはいえない。
(2) また、ALH社がサービス業を営もものであったとした場合、同社は所在地国基準をも充足していなかった。
すなわち、措置法六六条の六第三項二号に定める所在地国基準の趣旨とするところは、特定外国子会社等がその本店所在地国において資本投下を行い、その地の経済と密接に関連して事業活動を行っている場合には、その地(本店所在地国)に本店を置く経済的合理性があることとなるから、そのような場合については、タックスヘイブン課税の規定を適用しないとするものである。
しかし、原告の主張によれば、ALH社は、香港に本店を置いて原告の南洋材輸入に関するサービス業務を行っていたものであるとするが、右サービスの提供先は原告及びシッパーであり、原告は日本国に本店を有し、シッパーはジャカルタ、サンダカン、ミリ等に居住するものであることからすれば、ALH社はその本店所在地国である香港の経済と密接に関連して事業活動を行っていたとは認められず、したがって香港に本店を置く経済的合理性はないこととなる。
そうすると、ALH社がサービス業を営もものであるとしても、所在地国基準を充足していなかったというべきである。
(四) 結局、いずれにしても、ALH社については、前記のタックスヘイブン課税規定の適用除外要件が充たされていなかったこととなるから、タックスヘイブン課税規定が適用されることとなるところ、その本件各事業年度の適用対象留保金額(原告はALH社の全株式を保有しているので、その全額が課税対象留保金額となる。)を措置法施行令三九条の一四第一項の規定に基づいて計算すると、次のとおりとなる。
(1) 昭和五五年三月期
(税引後当期利益)(減価却超過額)(法人税等引当金)(未処分所得)
521.964+2.839.50+108.000=632.803.50(香港ドル)
円換算=632、.803.50(香港ドル)×43.12円(為替換算レ-トTTM)=27.286.486円
(2) 昭和五六年三月期
(税引後当期利益)(減価償却超過額)(法人税等引当金)(未処分所得)
3.025.757+599.37+620.500=3.646.856.37(香港ドル)
円換算=3.646.856.37(香港ドル)×45.68(為替換算レ-トTTM)=166.588.398円
(3) 昭和五七年三月期
(税引後当期利益)(減価償却超過額)(法人税等引当金)(適用対象留保金額)
2.223.115+3.608.54+434.700=2.661.423.54(香港ドル)
円換算=2.661.423.54(香港ドル)×41.01円(為替換算レ-トTTM)=109.144.979円
4 本件各処分の適法性
よって、原告の本件各事業年度の法人税につき、それぞれ右の特定外国子会社等に係る課税対象留保金額を益金に算入して算出した前記の各所得金額に誤りはなく、これを前提とした本件各更正及び国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの)六五条一項の規定に基づく本件各決定も適法である。
四 被告の主張に対する原告の認否
1 (一)被告の主張1一(一)のうち、(8)の金額を加算すべきであることは争い、その余は認める。したがって、(9)の加算額合計は一七九二万〇五九六円であり、(15)の所得金額は二四億六〇九三万九三五七円である。
(二) 被告の主張1(二)のうち、(3)の金額を加算すべきであることは争い、その余は認める。したがって、(4)の加算額合計は三三〇万三一八三円であり、(8)の所得金額は、△六億〇二四六万八四九三円である。
(三) 被告の主張1(三)のうち、(2)の金額を加算すべきことは争い、その余は認める。したがって、(5)の加算額合計は一五七七万〇五二八円であり、(7)の所得金額は四億九八〇〇万八八五八円である。
2 被告の主張2は認める。
3 (一)被告の主張3(一)の事実は認める。
(二) 同(二)の事実のうち、アないしクの事実は認めるが、ALH社が木材の卸売業を営んでいるとの事実は否認し、また同社が香港において自らその事業の管理支配を行っていないとの主張は争う。
(三) (1) 同(三)(1)の主張は争う。
(2) 同(三)(2)の主張は争う。
(四) 同(四)の事実のうち、被告主張の各金額及び計算結果は認めるが、ALH社について適用除外要件が充たされていないこと及び右の課税対象留保金額を原告の益金に加算すべきであるとの主張は争う。
4 同4は争う。
五 原告の主張
ALH社は、次のとおり、措置法六六条の六第三項に規定する管理支配基準あるいは所在地国基準を充たしていた。
1 管理支配基準について
(一) ALH社の主たる業務は、原告が東南アジア諸国で原木の買付けを円滑に行うことができるようにシッパーからの要請に応じた種々のサービスを提供することにあり、その具体的な業務内容は、原告の東南アジア諸国からの南洋材買付けに当たっての売買契約書の作成、シッパーへの融資、信用状の開設・決済、船積み書類の作成・受領・決済等の貿易・金融に関するサービス業務及びこれらの業務に関連してALH社を訪れるシッパーへの対応、シッパーへの情報提供等の付随業務であった。そして、原告が右の南洋材の買付けを円滑に行うためにはALH社を香港に設置せざるを得ない経済的合理性が存していたものである。
(二) ALH社は、右サービス業務に係る事業計画を自ら決定し、香港において、常勤取締役Aを中心にその独自の判断でこれを実行していたものであり、ALH社が、同社の事業の管理支配運営を自ら行っていたことは、次の諸点から明らかである。
ア ALH社は、定期に株主総会を開催して、重要事項の決議、承認の手続を履践し、必要に応じて取締役会を開催し、業務運営の重要事項の審議決定を行い、これらの議事録を作成保管していた。
イ ALH社は、香港に賃借事務所を設置し、ALH社専任の常勤取締役であるAがその裁量で固有の従業員を雇用し、これを指揮監督して業務を遂行し、会計帳簿に記録して保管し、自ら税務申告を行い、住友銀行香港支店に固有の口座を設けて金銭の出納を行わせていた。
ウ ALH社は、原告との間では、サービス契約を締結して受託事務の内容、受託事務に対する報酬算定基準を明確化し、契約条項を厳格に履践、実行していた。
(三) なお、ALH社の取締役会及び株主総会の開催場所が原告の本店所在地であること、ALH社の取締役全員が原告の取締役を兼ねていること、ALH社の常勤取締役が一名に過ぎないことは、子会社においては常態ともいうべき事態であって、これによって管理支配が否定されるとすれば、およそ子会社については管理支配基準を充足することはなくなるものといわなければならない。また、ALH社の業務は、原告の木材輸入の取引に必要なサービスを提供することにあり、貿易取引の実質的主体は原告であるから、取引に必要な書類の作成、代金の決済、融資に関する手続をALH社が原告の指示に従って行い、また、輸入船積みの手続、クレーム処理、シッパーに対する債権債務の管理を原告が行っているのは当然のことである。
2 所在地国基準について
(一) ALH社は、香港に事務所を設け、同事務所において原告あるいはシッパーとの間で電信を授受し、これらに基づいて原告の貿易関連契約書を作成し、株式会社住友銀行香港支店に対して貿易関連信用状の開設の依頼をし、同支店を通じて輸入代金の授受決済ないしシッパーに対する各種金融をし、同支店を通じて差金の保管、授受等のスイッチ業務を行っていたから、所在地国基準を充たしている。
(二) 被告は、ALH社が香港の経済と密接性がないとして所在地国基準を充たしていなかったと主張するが、措置法六六条の六第三項二号では、特定外国子会社の業務とその所在地国の経済との密接性は要求されておらず、仮にそれを要求する趣旨が含まれているとしても、それは特定外国子会社を設置する経済的合理性の一徴憑として考えられるべきである。そして、ALH社を香港に設置すべき経済的必要性として次のような点が存在していた。すなわち、原告は、従前南洋材の輸入についてもATAKA LUMBER AMERICA INC(以下「ALA社」という。)からサービス業務の提供を受けていたが、同社はアメリカ合衆国ポートランドに所在するため、東京との間では、一七時間の時差があり、メール日数は二日を要し、これらの点は、商機の獲得ないし為替相場変動時における為替損の回避、原告との緊急連絡、南洋材のシッパーの便宜の点から問題であった。これに対し、香港は、東京との時差は一時間であり、メール日数は一日と、地理的に優れている。また、南洋材のシッパー主宰者の大部分は中国系の華僑であって、その大部分が香港に拠点を置いているため、頻繁に香港を訪れることから、香港においてシッパー主宰者から情報等を引き出せたり、シッパー主宰者を招宴して意思疎通を行うのに好都合であるという事情があったのである。
六 原告の主張に対する被告の認否
1 原告の主張五の柱書の主張は争う。
2 同1(一)の事実は否認する。ALH社は南洋材の貿易業を営む会社である。
同1(二)の事実のうち、ALH社が会計帳簿を保管していたこと、株主総会及び取締役会が原告の本店所在地である東京で開催されていたことは認めるが、その余の事実は否認する。
同1(三)の主張は争う。
3 同2のうち、ALH社が香港に事務所を設け、住友銀行香港支店を取引銀行としていた事実は認め、その余の事実は知らない。その主張は争う。
第三 証拠(省略)
 理由
一 被告が本件各更正及び本件各決定をしたこと及び原告の本件各事業年度における所得金額の計算の基礎となる各項目のうち被告主張の特定外国子会社等に係る課税対象留保金額を益金に加算すべきであるとの点を除く部分が被告主張のとおりであることについては、いずれも当事者間に争いがない。
二 1本件の争点は、専ら、被告主張の特定外国子会社等に係る課税対象留保金額を原告の各事業年度の益金に算入すべきか否かの点にあるところ、原告が大蔵大臣から軽課税国として指定されている香港に本店を有するALH社の発行済株式のすべてを保有しており、同社が原告に係る措置法六六条の六第一項所定の特定外国子会社等に該当することについては当事者間に争いがないから、以下、ALH社がタックスヘイブン課税規定の適用除外要件を充たしていたかどうかを検討する。
2 措置法六六条の六第三項の規定によれば、タックスヘイブン課税規定の適用が除外されるためには、特定外国子会社等が非持株会社等基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準(特定外国子会社等の主たる事業が卸売業等である場合には、非関連者基準)及び配当基準のすべてを充足することが必要であり、右基準のいずれか一つでも充足していない場合はタックスヘイブン課税に関する規定が適用されるものとされているところ、本件では、まず、ALH社が右の管理支配基準を充たしていたか否かが争われているので、この点について判断することとする。
(一) そもそも、前記のようなタックスヘイブン課税の適用除外規定は、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その所在地国で事業活動を行うことにつき十分な経済的合理性がある場合にまでタックスヘイブン課税規定を適用することは、我が国企業の正常な海外投資活動を阻害する結果を招くことになるので避けるべきであるとの趣旨で設けられたものと解されるから、右の管理支配基準は、右のような場合に当たるかどうかを事業の管理運営の面から判断する基準をいうものと考えられる。したがって、右の基準を充足しているといえるか否かは、当該外国子会社等の重要な意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催、役員の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が本店所在地国で行われているかどうか、業務遂行上の重要事項を当該子会社等が自らの意思で決定しているかどうかなどの詣事情を総合的に考慮し、当該外国子会社等がその本店所在地国において親会社から独立した企業としての実体を備えて活動しているといえるかどうかによって判断すべきものと解される。
ところで、本件各事業年度においてALH社の行っていた主たる事業が卸売業あるいはサービス業のいずれの範疇に属するものと見るべきかについては、当事者間に争いがあり、原告は、ALH社の行っていた事業が貿易関連のサービス業に当たるものであるとし、そのような事業内容を前提とすれば、ALH社を香港に設置することには十分な経済的合理性が認められ、また、ALH社がその本店所在地国たる香港においてその業務に対する管理、支配を行っていたこととなるから、右の管理支配基準が充足されていたと主張する。しかしながら、措置法六六条の六第三項の規定の文言からすれば、少なくとも管理支配基準を充足しているか否かの判断に関する限りでは、ALH社の業務が卸売業とサービス業のいずれに該当するかということは、直接的にはさほど決定的な意味を持たないものというべきである。すなわち、同項の規定からすれば、この管理支配基準を充たし本店所在地国で独立した企業の実体を備えて事業活動を行っていると見られる特定外国子会社等であっても、その行う事業の内容に応じて要求される非関連者基準や所在地国基準を充たしておらず、所在地国に本店を置く経済的合理性が認められない場合には、なおタックスヘイブン課税の規定が適用されることとなっており、他方、本店所在地国で事業活動を行うことに十分な経済的合理性が認められる場合であっても、およそ管理支配基準が充たされていない限り、なおタックスヘイブン課税規定が適用されることになっているのである。このような規定の仕方からすれば、同項にいう管理支配基準は、当該特定外国子会社等の業務の種別とは一応無関係に、その子会社等が独立企業としての実体を備えて、その本店所在地国において、自らの決定、判断に基づいてその事業の管理、支配及び運営を行っていると見られるか否かを問題としているものと考えるのが相当である。したがって、本件においてALH社がこの管理支配基準を充足していたか否かも、ALH社が親会社たる原告の管理支配を離れ実質的に原告から独立した法人としての立場で本店所在地国たる香港においてその事業活動を行っていたと見られるか否かを、その事業活動の実態に即して直載に判断すれば足りるものと考えられる。
(二) 成立(甲二号証については原本の存在を含む。)に争いがない甲二号証及び乙一五号証の一、証人Aの証言により成立が認められる甲一号証、証人Bの証言により成立が認められる同三号証、証人A及び同Bの各証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告によるALH社設立の経緯等は次のようなものであったことが認められる。
(1) 原告は、マレーシア、インドネシア、フイリッピン等東南アジア諸国のシッパーとの間で継続的に南洋材の取引を行っている者であるが、これらの国のシッパーは、自国による為替管理が厳しく、資金の海外持ち出しが不自由であること、使途を公にしたくない資金を海外に貯留し、かつ、課税所得を低く押さえようとすることなどの理由から、輸出代金の一部(以下、これを「差金一という。)を海外に貯留することを希望することが多く、また、原告の方で南洋材の買付けを有利に進めるためには、これらのシッパーに対して金融の便の供与を行う必要があった。
しかし、我が国の為替管理の状況からして、原告自身が直接シッパーの右のような要請に応えることが困難であったため、原告は、為替管理の緩やかな第三国の法人等を介してシッパーとの間での南洋材取引の代金の決済を行ういわゆるスイッチ取引及び金融サービスを行う必要があった。
(2) 原告は、従前、右のようなスイッチ取引等を同社の子会社でアメリカ合衆国ポートランドに本店を置くALA社を通して行っていたが、同社は東南アジア詣国のシッパーとの南洋材取引に関しては地理的に不便な場所にあったので、東京との時差が少なく為替管理も緩やかで東南アジアのシッパーの主体である華僑の事業の拠点でもある香港にALH社を設立することとし、昭和五三年七月七日、ALH社を設立した。
ALH社は、設立時から昭和五九年八月までの間は、香港セントラル、ドウボーロード六所在の広東銀行ビル二〇階の一部(約二〇坪)を、同年九月以降は香港セントラル、クイーンズロード一五所在のエデインバータワー一七階の一部(約四〇坪)を賃借して事務所を開設し、本件各事業年度当時は、常勤取締役Aのほか現地採用の従業員二名がそこに勤務していた。
(三) また、前掲の甲一号証、原本の存在及び成立に争いがない乙三号証及び同四号証、証人Aの証言により成立が認められる甲四号証の一及び二、同五号証の一及び二、同六号証の一ないし五、同七号証、同八号証の一ないし四、同九号証、同一〇号証、同一一号証の一ないし四並びに同一二号証の一ないし三並びに証人A及び同Bの各証言によれば、ALH社の行っていた事業の内容等は次のようなものであることが認められる。
(1) ALH社は、原告の南洋材の取引について、専ら原告がシッパーと交渉して取り決めた内容に従い、自らが右取引の形式上の買主となってシッパーとの間で売買契約を締結し、これに関する信用状の条件により必要とされる送り状、輸出許可状、原木明細書、船荷証券その他の関連書類にも買主としての名義を提供して、取引に必要な書類を整え、更に、原告の指示に従って代金支払のための信用状の決済を行っていた。その際、原告とシッパーとの間で取り決められた差金については、その支払を留保しておき、後日、シッパーの要請に基づく原告の指示があり次第、これをシッパーに交付していた。
(2) 更に、ALH社は、原告の南洋材の輸入取引を有利に行うため、住友銀行香港支店からレッドクローズ信用状の開設を受け、これをもってシッパーに対して輸出前貸金融(木材集荷資金等に係る短期金融)の便を供与し、また、同支店からスタンドバイクレジットの発行を受け、これをもってシッパーに対して輸出関連中長期金融の便の供与を行っていた。
(3) ALH社は、シッパーから買い付ける南洋材について形式的に自らが買主となることから、原告に対しては更にこれを転売する形を取り、したがって、ALH社の会計処理上も、シッパーから南洋材を仕入れて原告に売却したような処理をしていた。
しかし、シッパーとの間での南洋材の取引の交渉及び契約内容の決定のほか、右の取引に係る南洋材の輸送、クレームの処理などは、専ら原告が独自に行い、また、ALH社のシッパーに対する代金の支払についても、すべて最終的には原告がこれを負担し、前渡金、貸付金及び船積みごとの取引金額などシッパーに対する債権債務も原告において管理していた。
(4) ALH社と原告との間では、右のような一連の事務処理に対する対価として原木FOB価格の一・五パーセント相当の手数料を原告からALH社に支払う旨の基本契約が結ばれ、これに基づいて、各取引ごとに右金員が原告からALH社に支払われていた。
(5) また、ALH社は、原告の指示に従って、原告が自ら買主にはならないでシッパーから買い入れて第三者に転売することとした南洋材の取引についても、原告に代わって形式上の契約当事者となり、前記(1)及び(2)と同様の事務を行って原告からこれに対する手数料相当額の対価を得ていた。
(四) 更に、ALH社の業務執行に関する重要な意思決定機関である取締役会及び株主総会は、ALH社の本店所在地である香港ではなく、 すべて原告の本店所在地において開催されていたこと、ALH社の取締役四名は、いずれも原告の取締役を兼任しており、ALH社に常勤の取締役はA一名だけであったこと、ALH社の役員の人事は、すべて原告の取締役会で審議され、決議されていたこと、右Aの給与改訂が原告の社内の稟議で決定されていたこと、本件各事業年度以降の出来事ではあるが、ALH社は、その事務所の借り換えに係る許諾、新事務所の内装の内容及び予算についての承認、新事務所の披露等について、その都度、原告に対して稟議を申し出て、その決定を得ていたことについては、いずれも当事者間に争いがなく、しかも、成立に争いがない乙一五号証の一ないし三によれば、右の事務所の借り換え、新事務所の内装及びその披露晩餐会の開催についての稟議の内容には、これらに要する費用額を示してこれに対する予算について原告の承認を求める趣旨が含まれていたことが認められる。
(五) 右の(二)ないし(四)で認定した各事実を総合すると、ALH社は、取締役会や株主総会による同社の重要な意思決定を専ら原告の本店所在地で行い、役員も全員が原告との兼務であってA以外はALH社には常勤しておらず、ALH社の役員の選任など人事に関する事項から新事務所の内装、披露晩餐会の開催等に至るまでの各種のALH社の事務処理の方針を原告において最終的に決定し、また、これらに要する費用の支出についてもALH社では独自のその支出を決定するのではなく原告の決済を仰ぐといった方法で、その事業の管理、運営を行っていたものと考えられる。しかも、ALH社の業務の範囲やその具体的な内容自体も、専ら原告が自らの決定、判断によって各シッパーとの間で行う南洋材の取引によっていわば自動的に決定されてくるという仕組みになっており、ALH社の独自の判断によってこれを決定するというものではなかったものと考えられる。このような事実関係からすれば、ALH社は、その本店所在地国たる香港において独立した法人としての立場でその事業を自ら管理、支配及び運営していたものとは到底いえず、むしろ、その親会社たる原告がその本店所在地国たる我が国においてその管理、支配を行っていたものといわなければならない。
これに対し、原告は、ALH社の例でも前記のスイッチサービスやシッパーへの金融などの業務を自ら決定し、香港において常勤取締役Aを中心にこれを実行していたのであるから、同社は管理支配基準を充たしていたと主張するが、これらの業務は、いずれも原告がシッパーとの間で取り決めた輸入契約の内容に従って定型的に処理されるべき内容のものばかりであり、右業務の遂行上とりたててALH社の独自の重要な判断等が要求されるものでなかったと解されることは前記のとおりであるから、右の主張は採用できない。
また、原告は、株主総会や取締役会が親会社の本店所在地で開催されたり、役員が親会社の役員を兼務し常勤役員が一名程度であることなどは、いずれも子会社の場合には常態ともいうべき事態であり、このことを根拠に管理支配基準が充たされていないとすることは相当でないと主張する。しかし、措置法六六条の六第三項の規定は、タックスヘイブン課税規定の適用除外を受けるための要件として、当該外国子会社等が自らその本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を行っていることを要求しているのであり、当該軽課税国に子会社を設立することに経済的な合理性があり、右のような事態が子会社においては一般に行われているとしても、右の要件を備えていない限り、タックスヘイブン課税規定の適用を除外しないものとしていることは前記のとおりであるから、原告の右の主張も採用できない。
3 したがって、右のとおり本件各事業年度においてALH社が管理支配基準を充たしていない以上、その余の点について判断するまでもなく、ALH社の課税対象留保金額は原告の所得の金額の計算上益金の額に算入されるべきこととなる。そして、被告主張の本件各事業年度における原告の特定外国子会社等に係る課税対象留保金額の基礎となるべき各金額及びその計算結果については当事者間に争いがないから、原告の本件各事業年度の所得金額の計算において、被告がその主張の金額を益金に算入すべきものとして本件各更正及び本件各決定を行ったことには、何ら違法はないものというべきである。
三 よって、原告の本件各請求は理由がないから、これをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 涌井紀夫 市村陽典 小林昭彦)
別表一~三(省略)

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