H11. 1.29 京都地裁 平成10(行ウ)13 公文書一部非公開決定取消請求事件
H11. 1.29 京都地裁 平成10(行ウ)13 公文書一部非公開決定取消請求事件
主文
一 被告が原告に対し平成六年八月四日付けでした「飲食を伴う接遇に関する文書(日付、接遇を行なった場所、金額、目的、相手先〔職名、肩書を含む。〕の分かるもの。ただし、コーヒー等の茶菓の類を除く。平成五年度企画調整局及び市長室分)」の別紙公文書目録記載の文書についての一部非公開決定のうち、同目録「非公開が妥当な部分」を公開しないとする決定(ただし、異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
主文と同旨
第二 事案の概要
一 本件は、原告が、京都市公文書の公開に関する条例(平成三年七月一日京都市条例第一二号、以下「条例」という。)に基づいて、京都市企画調整局及び市長室の平成五年度分の飲食を伴う接遇に関する文書の公開を請求したのに対し、そのうちの接遇の相手先が分かる部分を非公開とした被告の決定の取消しを求める抗告訴訟である。
二 争いのない事実等
争いのない事実及び証拠により認定することができる事実は次のとおりであり、〔 〕内は認定に供した証拠である。
1(当事者)
(1) 原告は、肩書所在地に事務所を置く権利能力なき社団であり、条例五条一項に規定する公文書の公開請求権者である。
(2) 被告は、条例二条一号の公文書の公開を実施する機関である。
2(本件処分)
(1) 原告は、条例五条一項に基づいて、平成六年六月二九日被告に対し、京都市企画調整局及び市長室の平成五年度分の「飲食を伴う接遇に関する文書(日付、接遇を行った場所、金額、目的、相手先〔職名、肩書を含む。〕の分かるもの。ただし、コーヒー等の茶菓の類を除く。)」の公開を請求した。
(2) これに対し、被告は、平成六年八月四日付けで原告の請求にかかる文書を別紙公文書目録記載の七九件の文書(以下「本件公文書」という。)と特定した上、そのうち協議、懇談及び接遇の相手先が分かる部分を非公開とし、その余の部分を公開する旨の決定をし(以下「原処分」という。)、同日付けでその旨を原告に通知した。
(3) 原告は、同年九月九日右処分を不服として行政不服審査法六条によりその取消を求める異議申立てをした。
(4) 被告は、平成一〇年一月二三日付けの京都市公文書公開審査会の答申に従って、同年三月二六日付けで別紙公文書目録記載の「公開すべき部分」欄記載の部分について公開し、「非公開が妥当な部分」欄記載の部分を非公開とする旨変更する決定をした(以下「本件処分」という。)。
3(条例の規定)
条例は、八条で(公開しないことができる公文書)として「実施機関は、次の各号の一に該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。」と規定する。
(1) 条例八条一号 プライバシー情報
個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で、個人が識別され、又は識別され得るもののうち、公開しないことが正当であると認められるもの。
(2) 条例八条二号 法人等事業活動情報
法人(国及び地方公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報で、公開することにより当該団体又は個人の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を明らかに害すると認められるもの。ただし、次のいずれかに該当する情報を除く。
ア 事業活動によって生じ、又は生じるおそれのある危害から人の生命、身体又は健康を保護するため、公益上公開することが必要であると認められるもの
イ 違法又は著しく不当な事業活動によって生じ、又は生じるおそれのある支障から市民の生活を保護するため、公益上公開することが必要であると認められるもの
ウ ア又はイに準じる情報で、公益上公開することが特に必要であると認められるもの
(3) 条例八条四号 国等協力関係情報
本市と国、他の地方公共団体又はこれらに準じる団体(以下「国等」という。)との間における協議、協力、依頼等により行う事務に関して作成し、又は取得した情報で、公開することにより当該国等との協力関係又は信頼関係を損なうと認められるもの
(4) 条例八条七号 行政運営支障情報
本市又は国等が行う許可、認可、試験、争訟、交渉、渉外、入札、人事その他の事務事業に関する情報で、公開することにより次のいずれかに該当するもの
ア 当該事務事業の目的が著しく損なわれると認められるもの
イ 特定のものに不当に利益又は不利益を与えると認められるもの
ウ 関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれると認められるもの
エ アからウまでに掲げるもののほか、当該事務事業又は同種の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認められるもの
4(非公開とした理由)
被告は、次の理由により本件公文書を一部非公開とした。〔甲一〕
なお、以下、別紙公文書目録記載の番号により公文書を特定する。
(1) 公文書番号一〇、一一、一三、一四、一六、二五、二七、二九、三五、三六、三九、四〇、四二、四五、四八、四九、五一から六〇、七七について
これらの文書は原処分では、その一部が非公開とされていたが、本件処分では公開することとされた。
(2) 公文書番号一、三、一七、二一、二二、二三、三〇、三二、三三、三七、四七、五〇、六七、六九-一、六九-二、七一-一、七三、七四、七五-三について(これら文書を以下「公文書分類ア」という。)
これらの文書は、国、他の地方公共団体又はこれらに準じる団体の職員が、当該団体の事務事業に関する調査のために京都市に来庁した際の協議等、京都市の事務事業に関して国等の職員と行った協議等又は京都市と国等が共同で進める事務事業に関して行った協議等に要した経費の支出決定書である。本件協議等に出席した国又は他の地方公共団体の職員(ただし、国の中央省庁等の課長相当職以上の職員は除く。)については、国又は他の地方公共団体がどの職員に京都市との協議等に当たらせたかは当該団体の内部情報であると考えられ、職員の氏名を公開すると京都市と当該団体との信頼関係を損なうから、条例八条四号に該当する。
また、公文書番号二三、三二の協議等の相手方には大学の教員等が含まれており、当該出席者はその有する学識等を踏まえた京都市の要請により出席したもので、職務として出席したものでない。このように大学の教員等が職務としてではなく、ある特定の行事に参加し、誰と懇談し、飲食をともにしたかは通常他人に知られたくない事項であるから、その職名及び氏名は条例八条一号に該当する。
(3) 公文書番号二、九、六二、七六について(これら文書を以下「公文書分類イ」という。)
これらの文書は、他の地方公共団体の長等との協議に関するものであるが、国又は他の地方公共団体の職員(ただし、国の中央省庁等の課長相当職以上の職員と地方公共団体の長等特別職の者は除く。)については、国又は他の地方公共団体がどの職員に京都市との協議等に当たらせたかは当該団体の内部情報であると考えられ、職員の氏名を公開すると京都市と当該団体との信頼関係を損なうから、条例八条四号に該当する。
また、公文書番号六二の協議等の相手方には大学の教員等が含まれており、当該出席者はその有する学識等を踏まえた京都市の要請により出席したもので、職務として出席したものでない。このように大学の教員等が職務としてではなく、ある特定の行事に参加し、誰と懇談し、飲食をともにしたかは通常他人に知られたくない事項であるから、氏名は条例八条一号に該当する。
(4) 公文書番号四、一九、七〇、七一-二について(これら文書を以下「公文書分類ウ」という。)
これらの文書は、京都市職員と国等の職員との協議に関するものであるが、相手方として出席している国等の職員は当該職員の職務に関連して協議に出席しているものではなく、京都市が市政に関する指導、助言を求めるため、また、国政に関連し京都市が今後の市政のために知っておくことが必要な情報収集のため、京都市と特定の関係を有する者を通して行った要請を受けて協議に出席したものであり、相手方の出席はこのような個人的つながりに基づく。本件で相手方の職名及び氏名を公開すると、右協議に出席していること自体について様々な憶測や誤解が生じ、出席している相手方の所属する組織内での評価や立場に少なからず影響を与えるおそれが十分にあり、京都市と相手方との信頼関係を著しく損ない、かつ、今後この種の協議を行うことに著しい支障が生じるから、条例八条七号に該当する。
(5) 公文書番号三八、七五-一について(これら文書を以下「公文書分類エ」という。)
これらの文書は、国の行う工場制限法等にかかる事務事業に関して、右事務事業を担当する国の職員と協議したことに関するものである。本件協議は、国に対し、京都市の有する様々な特殊事情の説明を行うとともに、右事務事業に関して様々な配慮を求めるために京都市が国の職員に出席を求めたものである。右事務事業は京都市の施策にとって重要課題である。このような協議の性格から、会議に出席した相手方の職名及び氏名を公開すると、国の行う事務事業につき無用の誤解を招くこととなり、信頼関係が著しく困難となることから、条例八条七号に該当する。
(6) 公文書番号七、七二、七五-二について(これら文書を以下「公文書分類オ」という。)
これらの文書は、京都市出身の中央省庁等に勤務する職員で構成されている団体の会員との協議に関するものであるが、同団体の会員は中央省庁等の職員としてではなく、私人として入会している。このような個人が特定の団体に入会しているかどうかは当該個人の活動に属することであり、個人のプライバシーに属することであるから、その職名及び氏名は条例八条一号に該当する。
(7) 公文書番号五、六、二四、二六、三一、三四、四三、六一、六八について(これら文書を以下「公文書分類カ」という。)
これらの文書は、法人等の職員が京都市を視察した際の懇談、法人等の職員との定例的な協議、事務連絡的な会議等にかかるものであるが、法人等としてどの職員を京都市との協議に出席させたかという情報は、当該法人等の内部情報であるから、相手方職員の氏名及び当該職員個人が識別される職名は、公開すると当該法人等の事業活動上の正当な利益を明らかに害するから、条例八条二号に該当する。
また、出席者は自分の氏名及び個人が識別される職名が公表されることは全く想定しておらず、これらを公開することは、出席者個人の行動、社会活動が公表され、プライバシーを侵害するおそれがあるから、条例八条一号に該当する。
さらに、公文書三一及び六八にかかる協議の相手方には、他の地方公共団体の職員が含まれているが、他の地方公共団体の一般職職員の氏名は当該団体の内部情報であるから、職員の氏名を公開すると京都市と当該団体との信頼関係を損なうから、条例八条四号に該当する。
(8) 公文書番号二八について(これら文書を以下「公文書分類キ」という。)
この文書は、法的根拠を有する特殊法人(日本放送協会)の職員との協議にかかるものであるが、当該法人がどの職員に京都市と協議させるかどいう情報は、当該法人の内部情報であるから、その氏名を公開することは当該法人の事業活動上の利益を明らかに害するから、条例八条二号に該当する。
(9) 公文書番号一二について(これら文書を以下「公文書分類ク」という。)
この文書は、京都市長と京都市専門委員等との協議にかかるものであるが、右協議に法人の代表者の肩書を有する有識者が相手方として出席している。この協議は、京都市市政に対する指導、助言を得るため、所属する法人の代表者としてではなく、個人的なつながりを基として京都市の要請により出席しているものであり、この相手方の法人名、氏名を公開することは、京都市と相手方との信頼関係を著しく損ない、今後このような事務事業を行うことに著しい支障となるから、条例八条七号に該当する。
また、本件協議に出席した有識者は、自分の氏名及び個人が識別される職名が公表されることは全く想定しておらず、これらを公開することは、当該有識者個人の行動、社会活動が公表され、プライバシーを侵害するおそれがあるから、条例八条一号に該当する。
(10) 公文書番号一八、七八、七九について(これら文書を以下「公文書分類ケ」という。)
これらの文書は、過去に京都市市政に携わった経験を有する方(市各種審議会元委員、元特別職員、元市会議員)から、京都市の市政運営に対する指導、助言を目的とした協議にかかるものであるが、これら相手方は公職を離れた一私人として出席している。このような私人が、ある特定の行事に参加し、誰と懇談し、飲食をともにしたかは通常他人に知られたくない事項であり、その氏名については条例八条一号に該当する。
(11) 公文書番号八、一五について(これら文書を以下「公文書分類コ」という。)
これらの文書は、国家予算について、京都市の要望に関し国会議員への説明、協議に関するものである。国会議員は選挙を通じて様々な評価を受けなければならないという性格から、相手方国会議員の氏名を公開することにより市民が何らかの評価をすることとなり、当該議員が京都市に不信感、不快感を抱き、京都市のこのような折衝事務の執行に著しい支障が生じるから、条例八条七号に該当する。
(12) 公文書番号二〇について(これら文書を以下「公文書分類サ」という。)
この文書は、世界文化自由都市推進(「木の文化」研究所)に関するもので、相手方大学教員はその有する学識等を踏まえた京都市の要請により出席したもので、職務として出席したものでない。このように大学の教員が職務としてではなく、ある特定の行事に参加し、誰と懇談し、飲食をともにしたかは通常他人に知られたくない事項であるから、その氏名は条例八条一号に該当する。
(13) 公文書番号四一、四四、四六について(これら文書を以下「公文書分類シ」という。)
これらの文書は、京都大学の振興対策について京都市と京都大学との間で行った協議に関するものである。京都大学がどの職員に協議を行わせたかは大学の高度な内部情報であり、職員の職名及び氏名を公開すると京都市と京都大学との信頼関係を損なうから、条例八条四号に該当する。
(14) 公文書番号六三から六六について(これら文書を以下「公文書分類ス」という。)
これら公文書は、国立京都和風迎賓館の建設に関して建設の是非、位置等を巡って、各界から様々な意見が出されている状況の中で京都市が特定の相手方と内密に行った協議に関するものである。このような状況の中で、協議の相手方の職名及び氏名を公開すると国立京都和風迎賓館の建設に関して行われた協議の内容についてさまざまな憶測が流れるなど国立京都和風迎賓館の建設に関する事務の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じるので、条例八条七号に該当する。
三 争点
条例所定の非公開事由が存在するか。
四 争点に対する当事者の主張
1 被告
事実及び理由二の争いのない事実等の4(非公開とした理由)に記載のとおり。
2 原告
(1) 条例八条一号
最近の裁判例からは、公開するか非公開とするかは公務か私的用務かにより判断され、公務に関する事柄については非公開とすることはできない。本件の協議会はいずれも公務に関する事柄というべきで、その出席者を公開しないことはできない。
(2) 条例八条二号
被告は内部情報に該当するから条例八条二号に当たると主張するが、公開することにより法人の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を明らかに害すると認めるに足りる具体的な主張立証をしない。
(3) 条例八条四号
被告は内部情報に該当すると主張するが、公開することにより当該国等との協力関係又は信頼関係を損なうと認めるに足りる具体的な主張立証をしない。
(4) 条例八条七号
被告はこれらを公開すると、関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれ、又は、事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じるというが、信頼関係を損なうとする理由は不明であるし、事務事業に著しい支障が生じるという具体的理由を明らかにしない。
第三 争点に対する判断
一 条例八条一号該当性(公文書分類アの公文書番号二三、三二、公文書分類イの公文書番号六二、公文書分類オ、公文書分類カ、公文書分類ク、公文書分類ケ、公文書分類サについて)
1 条例は、個人情報で個人が識別され、又は識別され得るもののうち、公開しないことが正当であると認められるものについて非公開とする旨規定する。その趣旨は、個人のプライバシー保護に最大限の配慮をし、個人のプライバシーに関する情報が公開されてプライバシーが侵害されることのないようにするものであるが、他方、公開を請求する市民の権利との調和をはかるため、通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報が記録されている公文書を非公開とすることを定めたものと解される。
2 個人の氏名若しくは職名が、個人に関する情報で個人が識別され又は識別され得るものに該当することは明らかである。
3 本件公文書は、各種の協議会に要した経費の支出決定書であり、条例八条一号により非公開とされたのはその出席者の職名又は氏名である。これら情報が通常他人に知られたくないと望むことが正当であるというためには、公人又はこれに準じる立場で参加した場合には個人の領域の問題とはいい難いから、私的な立場での参加であることを要すると解すべきである。
ところで、純粋に私的な会合に公費が支出されることはないから、公費を用いた特定の協議会への出席は、特段の事情が認められない限り、公人又は公人に準ずる立場でのものと推認するのが相当であるところ、本件公文書はいずれも経費の支出決定書であるから、これら協議会への出席はいずれも公人又は公人に準ずる立場でなされたものと推認することができる。そして、被告の主張を前提としても、これらの協議会は市政又は市の事務事業に関連するというのであるから、右推認を覆す事情は認められない。
4 したがって、これら個人の職名若しくは氏名は条例八条一号に該当しない。
二 条例八条二号該当性(公文書分類カ、公文書分類キについて)
1 条例八条二号は、法人その他の団体又は事業を営む個人の営業の自由、公正な競争を保障するため、技術上のノウハウ、営業上の秘密など、公開することにより法人その他の団体又は事業を営む個人の正当な利益を明らかに害する情報の非公開を定めたものである。もっとも、条例八条一号と同様に公開を請求する市民の権利との調和をはかる必要があることは当然である。
2 法人等の職員の氏名若しくは職名が法人等に関する情報に当たることは明らかである。
3 しかし、被告は、相手方職員の氏名及び当該職員個人が識別される職名は当該法人等の内部情報に該当するから条例八条二号に当たるとするのみで、これを公開することにより法人の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を明らかに害すると認めるに足りる主張立証をしない。
4 したがって、これら法人等の職員の氏名若しくは職名は条例八条二号に該当しない。
三 条例八条四号該当性(公文書分類ア、公文書分類イ、公文書分類カの公文書番号三一、六八、公文書分類シについて)
1 国、他の地方公共団体若しくは大学の職員の氏名若しくは職名が、京都市と国、他の地方公共団体又はこれらに準じる団体との間における協議、協力、依頼等により行う事務に関して作成した情報に当たることは明らかである。
2 しかし、被告は、相手方職員の氏名若しくは職名は当該団体の内部情報に該当するから条例八条四号に当たるとするのみで、公開することにより当該国等との協力関係又は信頼関係を損なうと認めるに足りる主張立証をしない。
3 したがって、これら職員の氏名若しくは職名は条例八条四号に該当しない。
四 条例八条七号該当性(公文書分類ウ、公文書分類エ、公文書分類ク、公文書分類コ、公文書分類スについて)
1 条例八条七号は、京都市又は国等が行う事務事業の中には、入札予定価格、試験問題、用地買収計画、交渉の記録など、事務事業の性質上、公開することにより、その目的が損なわれたり、公正かつ適切な執行が妨げられるものがあるため、これらに関する情報を非公開とすることを規定したものである。
2(1) 公文書分類ウは、京都市職員と国等の職員との協議に関するものであるが、乙四、一九、七〇、七一-二によれば、京都市の市政や国家予算等に関する協議会の支出決定書と認めることができるから、その出席者の氏名若しくは職名が京都市又は国が行う事務事業に関する情報に該当する。
(2) 公文書分類エは、国が行う工場制限法等にかかる事務事業に関する協議会の支出決定書であるから、その出席者の氏名若しくは職名は国が行う事務事業に関する情報に該当する。
(3) 公文書分類クは、京都市長が京都市専門委員などの有識者から京都市市政に対する指導、助言を得るための協議に関する支出決定書であるから、その出席者の法人名、氏名は京都市が行う事務事業に関する情報に該当する。
(4) 公文書分類コは、国家予算について、京都市の要望に関し国会議員への説明、協議に関する支出決定書であるから、国会議員の氏名は京都市又は国が行う事務事業に関する情報に該当する。
(5) 公文書分類スは、国立京都和風迎賓館の建設に関する協議に関する支出決定書であるから、協議の相手方の職名及び氏名は国が行う事務事業に関する情報に該当する。
3(1) 公文書分類ウについて
被告は、出席している国等の職員は職務に関して協議に出席してたのではなく、京都市が市政に関する指導、助言を求めるため、また、国政に関連し京都市が今後の市政のために知っておくことが必要な情報収集のため、京都市と特定の関係を有する者を通して行った要請を受けて協議に出席したものであり、相手方の出席は個人的つながりに基づくので、相手方の氏名及び職名を公開すると右協議に出席したことについて様々な憶測や誤解が生じ、出席者の所属する組織内での評価や立場に影響を与えるおそれがあり、京都市と相手方との信頼関係を著しく損ない、今後この種の協議を行うことに著しい支障が生じるとする。しかし、相手方の氏名及び職名を公開するとどのような憶測や誤解が生じるかは不明であるし、出席者の組織内での評価や立場にどのような影響を与えるかも明らかでない。したがって、相手方の氏名及び職名を公開することによって関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれるということはできないし、同種の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認めることもできない。
(2) 公文書分類エについて
被告は、国が行う工場制限法等の事務事業に関し、国に対し、京都市の特殊事情を説明して配慮を求めるために京都市が国の職員に出席を求めたもので、会議に出席した相手方の職名及び氏名を公開すると、国の行う事務事業につき無用の誤解を招き、信頼関係が著しく困難となるとする。しかし、出席者の職名及び氏名を公開すると国の行う事務事業についてどのような誤解を招くのかは明らかでないし、それにより国との間で信頼関係が著しく損なわれると認めることはできない。
(3) 公文書分類クについて
被告は、京都市専門委員等の有識者は、所属する法人の代表者としてではなく、個人として京都市の要請により出席しているもので、相手方の法人名、氏名を公開すると、京都市と相手方との信頼関係を著しく損ない、今後このような協議を行うことに著しい支障となるとする。しかし、相手方の法人名、氏名を公開すると、京都市と相手方との信頼関係を著しく損なうことになり、或いは、京都市市政に対する指導、助言を得ることが困難になると認めるに足りる証拠はない。
(4) 公文書分類コについて
被告は、国会議員は選挙を通じて様々な評価を受けるから、国会議員の氏名を公開すると市民が何らかの評価をし、議員が京都市に不信感、不快感を抱き、京都市の国家予算に対する要望などの折衝事務の執行に著しい支障が生じるとする。しかし、国会議員が地方公共団体から陳情を受けることは公務というべきであって、疚しいものではないから、その氏名を公開されたからといって京都市に不信感、不快感を抱くとは言い難く、公開により事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認めることはできない。
(5) 公文書分類スについて
被告は、国立京都和風迎賓館の建設に関して建設の是非、位置等を巡って様々な意見がある中で、内密の協議の相手方を公開するとその建設に関して行われた協議内容について様々な憶測が流れるなどその建設に関する事務の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じるとする。しかし、協議への出席者の氏名及び職名を公開すると様々な憶測が流れるかは不明であり、また、様々な憶測が流れると建設に関する事務にどのような支障が生じるかも明らかでない。したがって、出席者の氏名及び職名の公開により事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認めるには足りないというべきである。
4 したがって、これら職員等の氏名若しくは職名は条例八条七号に該当しない。
五 結論
以上の次第で、本件公文書を非公開とした本件処分は違法であり取消を免れないから、原告の本訴請求を認容し、主文のとおり判決する。
本件口頭弁論終結の日 平成一〇年一一月二五日
京都地方裁判所第三民事部
裁判長裁判官 大谷正治
裁判官 山本和人
裁判官 西田政博

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