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H11. 7. 7 大阪地裁 平成10(行ウ)43 損害賠償請求事件 主文: 一 原告の被告Aに対する訴えを却下する。二 原告の被告B及び被告Cに対する請求をいずれも棄却する。三 訴訟費用は原告の負担とする。

H11. 7. 7 大阪地裁 平成10(行ウ)43 損害賠償請求事件

H11. 7. 7 大阪地裁 平成10(行ウ)43 損害賠償請求事件

 主文
一 原告の被告Aに対する訴えを却下する。
二 原告の被告B及び被告Cに対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。
 事実及び理由
第一 請求
一 被告らは、大東市に対して、金二万九三六〇円及びこれに対する平成九年一二月三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 仮執行の宣言
第二 事案の概要
 本件は、大東市の住民である原告が、隣接の門真市及び東大阪市の市長選挙の陣中見舞いとして交付したビール券の購入代金を議会の交際費から支出したこと(以下「本件支出」という。)につき、ビール券の交付が公職選挙法上違法な贈り物の疑いが濃く、本件支出が、地方自治法(以下「法」という。)二条一三項及び地方財政法四条一項に違反すると主張して、本件支出当時、大東市議会議長であった被告A、市議会事務局長であった被告B及び市議会事務局次長であった被告Cに対し、各自金二万九三六〇円の金員を損害賠償として大東市に支払うように求めた住民訴訟である。
一 前提事実(争いのない事実及び証拠により認定できる事実)
1 当事者
 原告は、大東市の住民である。
 本件支出当時、被告Aは、大東市の市議会議長であり、被告Bは、市議会事務局長であり、被告Cは、市議会事務局次長であった。
2 本件支出
 本件支出は、平成九年四月一日に、市長の支出負担行為が行われた。そして、一部につき、同年五月二二日に、資金前渡の方法で、被告Bの支出命令がなされ、資金前渡職員である議会事務局次長の被告Cに同年六月三日交付され、被告Cが同月五日にビール券二〇枚を金一万四六八〇円で購入し、同月一四日、被告A及び被告Cらにより隣接の門真市の市長選候補である訴外Dに対し、選挙の陣中見舞いとして交付され、さらに一部につき、同年一一月一〇日に、資金前渡の方法で、被告Bの支出命令がなされ(ただし、被告Cによる代決。)、資金前渡職員である議会事務局次長の被告Cに同月一四日交付され、被告Cが同年一二月二日にビール券二〇枚を金一万四六八〇円で購入し、同月三日、被告A及び被告Cにより隣接の東大阪市の市長選候補である訴外Eに対し、選挙の陣中見舞いとして交付された(甲三、五ないし七、丙一、八、九)。
 なお、本件支出の予算上の科目は、いずれも款「議会費」、項「議会費」、目「議会費」
、細目「議員活動費」、節「交際費」、細節「交際費」であった(甲三、丙九)。
3 原告の監査請求
 原告は、平成一〇年五月一三日、大東市監査委員会に対し、法二四二条に基づき、本件につき住民監査請求を行ったところ、同監査委員は、同年七月八日、原告に対し、措置請求は認められない旨の通知をした。
二 争点及びこれに関する当事者の主張
1 「当該職員」該当性
 本件は、法二四二条の二第一項四号前段の請求と解されるところ、被告らが、同号にいう「当該職員」に該当するか否か。
(一) 被告らの主張
 法二四二条の二第一項四号前段の請求にいう「当該職員」とは、専ら財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有する者あるいは、これらの者から権限の委任を受けるなどして同権限を有するに至った者をいうべきである。
 しかるところ、被告Aは、大東市議会議長の職にあった者であり、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有する者あるいは、これらの者から権限の委任を受けるなどして同権限を有するに至った者には該当せず、「当該職員」に該当しない。なお、本件支出等に関し決裁をした行為は、議長の事務統理権ないし議会事務局職員に対する指揮監督権に基づくものであって(法一〇四条、一三八条五項)、財務会計上の行為とは性質を異にするものである。
 被告B及び同Cは、大東市議会事務局職員であるが、事務局長は議長の命を受け議会の庶務を掌理し、その他の職員は上司の指揮を受け議会の庶務に従事する者であり(法一三八条七項、八項)、本件支出については、法令上本来的に権限を有する者ではない。ただし、本件支出は、地方自治法施行令(以下「令」という。)一六一条一項の「資金前渡」の方法により支出が行われているが、資金前渡の場合の支出命令については、大東市事務決裁規程八条一項により、議会事務局長である被告Bが専決により行い、さらに精算を行っており、また、個々の具体的な支出については、資金前渡職員である被告Cが行っており、その限度で同人らは権限を有する者ということができ、「当該職員」に該当する。
(二) 原告の主張
 被告らは、本件支出等の権限を有し、「当該職員」に該当する。
2 本件支出が法二条一三項、地方財政法四条に違反するか否か。
(一) 原告の主張
 議会の交際費は市民の税金による公費であって、他市の選挙期間中の特定候補者に贈答されるべきものではなく、むしろ
、本件のビール券の交付は、公職選挙法上違法な贈り物の疑いの濃いものであり、法二条一三項、地方財政法四条一項に違反するものである。
(二) 被告らの主張
 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関として、議案その他の審査権及び団体の事務調査権(法九六条、一〇〇条)に基づきその権能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有するとともに、実在する一箇の社会活動の主体たる団体として対外的な活動をしていることから、外部の者との間で交流活動を行い、社会通念上相当と認められる範囲で、議長が市議会を代表して社交儀礼を行うことは当然許容されてしかるべきであるが、この交際のために支出される費用については、法令上格別の制限が有るわけではなく、その交流の内容・程度等をどのようなものにするかは、裁量に委ねられている。
 本件で問題となっている市長選挙に伴う陣中見舞いについては、大東市議会が、従前より、一部事務組合を設置し、日常的に行政運営上協同関係にある大東市に隣接する三市(東大阪市、門真市、四条畷市)の市長選に、市長在任中、右事務組合の運営上、協力及び支援を得たこと等を考慮して、一〇数年来、大東市を含む四市間で市長選に当たり、慣行として行ってきたものであり、その内容も社交的儀礼の範囲であり、違法な点は存しない。
第三 争点に関する当裁判所の判断
一 被告らの「当該職員」該当性について
1 法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」とは、当該訴訟において適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本体的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者をいう。そして、右権限を有するに至った者には専決権者も含まれると解される。
2 これを本件の交際費について検討する。
(一) 大東市においては、議会の交際費の支出負担行為の権限者は、予算の執行権者たる普通地方公共団体の長である参加人大東市長であるが、具体的な支出負担行為は、毎年、予算議決を経た直後の四月一日に、議会事務局庶務係において「資金前渡」による方法との起案を作成し、長の決裁を経ることによって行われる(丙一)。
 しかし、支出命令については、令一六一条一項の「資金前渡」による場合は、大東市事務決裁規程二条二項、八条一項、別表1「3 財務に関する事項」(14)によって、議会事務局事務局長が専
決により行うことができるとされている(丙七)。
 また、令一六一条一項により資金前渡を受けた者は、単にその交付を受けた資金を出納保管するにとどまらず、交付を受けた目的にしたがって債務を負担し、その債務を履行するため、債権者に対して現金をもって支払をすることができ、具体的な支出に関し、支出負担行為から支払の権限までを合わせ有するものと解される。
 そして、最終的には、前渡資金交付の翌月一〇日までに精算命令書が事務局長の決裁を経て収入役に送付される。
(二) しかるところ、本件支出の具体的経緯は、前記第二、一、2のとおりである。
(三) 検討
 法上、地方公共団体の議会の議長の行う事務には、予算の執行に関する事務及び現金の出納保管等の会計事務は含まれておらず、大東市議会議長であった被告Aは、本件支出につき法令上本来的にこれらの権限を有する者とは認められず、右(一)(二)認定の事実からすると、被告Aに対し、交際費に関するこれらの権限が委任されたとみるべき根拠もない。したがって、被告Aは、本件支出すべてについて法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当しないというべきであり、原告の被告Aに対する訴えは、法によって特に提起することが認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして不適法である。なお、被告Aは、本件各支出の決裁関係書類(丙八)に押印していることが認められるが、右決裁行為は、議会議長の一般行政上の指揮監督権限に基づくものと解され(法一〇四条、大東市議会事務局設置条例施行規則七条)、同被告が財務会計行為を行う権限を有する者であることを示すものではないのであるから、右の結論を左右しない。
 一方、被告B及び被告Cについては、前記認定のとおり、本件支出につき、いずれも権限を有する者であり、法二四二条の二第一項四号の「当該職員」に該当するものというべきである。
二 本件支出の違法性
1 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関として、その権能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有し、合理的な必要性があるときはその裁量により種々の活動を行うことができ、議会がその活動の一環として、対外的折衝等を行う過程において、社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは、当該普通地方公共団体の議会も社会的実体を有するものとして活動している以上、右事務に随伴するものとして
、許容されるものというべきであるが、対外的折衝等をする際に行われた接遇であっても、それが社会通念上許容される範囲を逸脱したものである場合には、右接遇は当該普通地方公共団体の議会の事務に当然伴うものとはいえず、これに要した費用を公金により支出することは許されないものというべきである。
2 これを本件についてみると、本件で問題となっている門真市及び東大阪市は、大東市と隣接し、一部事務組合を設置していることからすると(弁論の全趣旨)、市議会が、従前協力関係にあった他市の前職の市長である市長選候補に対し、陣中見舞いとして一定の物品を贈ることもその範囲が社会通念上許容されるものであれば許されるというべきであるところ、本件において、陣中見舞いとして贈られたものはそれぞれビール券二〇枚であって、その金額もそれぞれ一万四六八〇円にとどまっており、いまだ社会通念上許容される範囲を逸脱するものとは認められない。たしかに、「選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期する」という公職選挙法の目的(同法一条)からすると、その妥当性には疑問もあり得ようが、これを直接規制する法規は見あたらず、いまだ、社会通念上許容される範囲を越えて違法なものであるとまでは断言できない。
三 結論
 以上のとおり、原告の被告Aに対する訴えは不適法であるからこれを却下し、原告の被告B及び被告Cに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第二民事部
裁判長裁判官 三浦潤
裁判官 林俊之
裁判官 栗原三緒

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